すずらんの花が美しく咲く5月5日、manaはinacoで1歳の誕生日を迎えた。manaの誕生日を祝うのに合わせて、inacoに来るこども達全員の健やかな成長を願って、みんなで記念樹を植えた。記念樹のセレモニーの締めくくりとして、青空の下、美しいバイオリンの音色を奏でてくれた人がいる。
父の教え子だったhukuraくん。その時、何年かぶりにinacoを訪れてくれていて、得意のバイオリンを披露してくれた。manaのHappy Birthdayの曲も弾いてくれ、みんなで歌った。心に残るきれいな音色だった。記念樹と合わせて、忘れられない思い出となった。 hukuraくんが、この世を去った。 そう、父から電話があった。心臓からくる急死だったらしい。あまりにも突然で、若すぎる死。言葉がでなかった。 東大のマスターで、ダイヤモンドに含まれる不純物を研究していたhukuraくん。inaco滞在中も論文に取り組んでいて、一息つく時にノートパソコンを開き、その内容を簡単に説明してくれた。パソコンの画面に映し出されていたのは、天体にある星雲を映し出したかのような画像。それがダイヤモンドに含まれる不純物なのだそう。ミクロの世界に宇宙がある、そう感じた。 研究の成果は世界の専門機関誌に発表され、これからを期待される人物だった。有望な地球物理学者を失ったと思った。本当に惜しまれる死。 東大のオーケストラ部に所属していたhukuraくん。 Happy Birthdayの曲が終わった後に、夫が冗談で、「毎年、この日に来てください。いつかinacoでオーケストラが聞けたら、すばらしいだろうに。」と言った言葉に、快い返事をしてくれた。来年あたりはカルテットくらいになるかもしれない、そう淡い期待を残して、hukuraくんはinacoを去っていった。また、来年も会えるかもしれないと思っていた。 その死は、あまりにもあっけなさ過ぎる。manaは、hukuraくんのバイオリンの音色を覚えていないだろう。顔すら記憶に残っていないだろう。 その音色はもう聞くことはできないけれど、manaが誕生日を迎える度に、1歳の誕生日のhukuraくんのバイオリンのことを話してあげたいと思う。 人間の記憶は、うつろいやすい。でも、私達家族はmanaの誕生日の度に、hukuraくんを思い出すに違いない。その屈託のない笑顔と美しいバイオリンの音色を。 hukuraくんに出会えた証として、これを記したかった。 そして、安らなる眠りを願って。
by ma-n-na
| 2006-10-23 23:17
| たいせつなひと・たいせつなもの
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